腹黒司書の甘い誘惑
彼の配慮に頷いていると、ウェイターさんがメニューを持ってきた。

それを眺めながら正面に座る柊也さんをちらりと見る。

この前笹本先生と三人で食事をしたときとは違う。
二人きりって、結構どきどきしてしまう。

メニューを見る柊也さんの伏し目がちな姿をぼうっと見ていたら、オーダーが決まったのか顔を上げ、こちらに気づいて「うん?」と首を傾けられた。

どきっとして顔を赤くすると、ふっと笑われた。

「俺を見てないでメニューを見ろ」

「わ、わかってますよ!」

昇していく脈を抑えられないまま、わたしは視線をメニューに戻した。

すみませんね、わたしばかり見惚れてしまって。


オーダーは二人ともシーフードのパスタ、サラダ、スープのセットメニューにした。

柊也さんが何を食べるのか聞いて、わたしもそれがいいなと思ったから。

「そういえば、この前笹本先生と食べに行ったときもわたしたち麺類を注文しましたよね」

「ああ……そうだったな。たまたまだけど、麺類は結構好きだよ」

「わたしも麺類好きです。お米も好きですけど」
< 139 / 201 >

この作品をシェア

pagetop