腹黒司書の甘い誘惑
わたしが笑うと柊也さんも口許を緩める。
こういう和やかな会話ができるなんて、一ヶ月前は想像もしなかった。

つんとしていて、人のことを小馬鹿にするようにからかってくる態度に何度嫌な感じ! と思ったことか。

今でもからかわれるけど、許容できるというか。
彼を好きな気持ちにすべて持っていかれている感じ。


それから暫くして頼んだ料理が運ばれてきて、会話をしながら食事をした。

お互いのことを話すのは初めてだったから、話が弾んだ。

学生時代や、友達や、普段の生活のこと。
得意なもの、不得意なもの。

相手のことをどんどん知ることができて、楽しくてずっと笑みがこぼれていた。

今日だけじゃない。
これからもっともっと、一緒にいて柊也さんのことを知っていくんだろうな。

そう思ったら、嬉しいし幸せな気分だ。


食事を終えてお店を出ると、柊也さんがさっさとお金を払ってしまって、戸惑っているうちに彼は歩きだしてしまった。

慌てているわたしをくすくす笑う柊也さんは「気にしなくていい」とわたしに言ってくれた。
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