腹黒司書の甘い誘惑
奢られ慣れてなんかいるわけがなくて、わたしは「すみません、ありがとうございます」とぺこぺこ頭を下げていた。

そして車に乗り、楽しい食事だったなと助手席で頬を緩めていると、柊也さんがじっとわたしを見つめてきたので、どきっとしながら視線を合わせた。

「この後どうする?」

「この後……」

「ホテルにするか、俺の部屋にするか」

そう言って唇の端を上げた柊也さんに、いっきに鼓動が速くなる。

「言っとくけど、帰らせるつもりはないよ。今夜は俺と一緒に過ごしてもらう」

「そ、それはあのっ……」

「想像する前に決めてくれる? どちらがいい?」

いたずらに微笑む柊也さんを見つめながら動揺。

まったくそういうことを意識していなかったわけじゃないけど、柊也さんの口から言われてしまうと恥ずかしくて頬に熱がたまってしまう。

「しゅ、柊也さんの部屋でまったりしたいです」

「……いいよ」

縮こまるわたしに目を細めた柊也さんは、たっぷりと視線を残してからエンジンをかけて車を発進させた。
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