腹黒司書の甘い誘惑
「べ、別になにも考えてないし、構えてもいませんから!」

慌てて視線をそらしたわたしを柊也さんはくすくす笑う。

わたしは頬に溜まっていく熱を感じながら、グラスのビールを飲み干してすぐに注ごうとした。

しかし柊也さんがわたしの手を掴んだので缶には届かず。

「じゃあ少し意識してもらおうか」

「わあっ」

囁くような声と共にわたしの体が柊也さんの方へ傾いた。
そして頬に彼の胸元がくっつく。

「なにするんですかっ」

「言ってただろ、まったりしたいって」

「い、言いましたけど、これは……」

柊也さんの胸にとどまりながら、わたしの体温がどんどん上昇していく。

「俺にもたれてまったりしてくれよ」

「っ……できませんよ」

「なんで?」

顔は見えないけれど、柊也さんは絶対意地悪な表情をしているだろうなと、面白くからかうような声色でわかる。

わたしはむすっとしながら顔を上げて柊也さんを見た。

「ドキドキするから……」

困りながら頬を赤らめて不貞腐れたように言ったら、意地悪な柊也さんは目を細めてわたしの頬を撫でた。
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