腹黒司書の甘い誘惑
本当に一瞬の表情だった。

だからあまり考えないほうがいいのかな。
わたしの思い違いかもしれないし。

でも柊也さん、なんとなく……わたしに見透かされないように表情を作ったように見えた。

これも考えすぎだといいけれど。

わたしは柊也さんを見ている視線をそっと落とした。


きっと付き合った最初の頃だったらそこまで気にしなかったかもしれない。

もしかしたら最初の頃から柊也さんは何か悩み事があって、わたしはやっと気づけたのかもしれない。

柊也さんと時間を過ごして、彼の癖や雰囲気に慣れてハマっていったから、ちょっとした変化を感じとるようになれたのかも。

悩むような表情を見かけた日から気にしていたら、やはり柊也さんがなにか考えているような様子を見るようになった。

彼も無意識なのかもしれない。普段もいつもと変わらない。本当にふとした無防備な瞬間だ。

今度はしっかりと聞く姿勢を作ってどうしたのかと聞くべきか。

でもまた余計な詮索だというようなことを言われたら、と考えると気が引ける。
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