腹黒司書の甘い誘惑
柊也さんだって勘が良い。
それにわたしのこの妙な態度では怪しまれて当然。

けれど柊也さんは日曜日の午後、買い物に付き合ってくれた。

怪しいと思っているけど一応付いていってやるか、というものかもしれない。どうであれ付き合ってもらえてよかった。

柊也さんを連れてやってきたのは、駅前の商業施設のショッピングフロアにある園芸コーナー。

ちらりと彼を見たら、不機嫌そうな顔をしていた。
勘付いただろうか。

「柊也さん、好きなお花選んで」

苗を見てから柊也さんに視線を向けると、彼はわたしをじっと見ていた。
思わず視線をそらしてしまう。

「ベゴニアなんかどうですかね?」

「花を選んでどうするんだ」

「え……えっと、」

「君が世話をするの?」

「いや……」

淡々とした声を出す柊也さんに対し、わたしは困って俯く。
だめだ、うまく隠せない。

「……理事長に、お兄さんにプレゼントしてみたらどうですか?」

わたしはゆっくりと顔を上げて言った。

「理事長は花が好きらしくて、よく学園の花壇やプランターの花の様子を見ています。だから……その、お花をきっかけに話をしてみたらどうかなって……」

「何故急に?」

彼は眉をしかめている。わたしの行動を不快だと思ったかも。

「柊也さん、最近ずっと何か悩んでるようにわたしには見えて……もしかしたら、お兄さんのことなんじゃないかなって思ったから……ごめんなさい」
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