腹黒司書の甘い誘惑
まっすぐ柊也さんを見てそう言ったわたしに、彼は唇の端を上げた。

「俺のこと支えてくれるんだっけ?」

「はい!」

張り切って元気よく頷くと、柊也さんが顔を近づけて軽く唇にキスをしてきた。

驚いたわたしはきょろきょろと周りを見る。

「ちょっ、こ、ここ図書館!」

「誰もいないし」

「いなくてもダメですよっ、もう!」

いたずらな柊也さんの表情に膨れっ面をするわたしだけど、内心ドキドキして好きだという気持ちでいっぱいだったりする。

「色々言ったけど、とにかくまず採用されないとしょうがないから。……まあ、大丈夫」

「そそそ、そうですよ! 余裕な感じ振り撒いてないでしっかり準備してください! ねっ!?」

「……なに慌ててんの? キスしたから?」

「っ……、こっち見ないで!」

からかうように見つめてくる柊也さんの所為でわたしの顔は真っ赤。

くすくす笑った柊也さんは、わたしを抱きしめた。

ああ、もう!
またドキドキするからダメなのにっ……。

「理乃に寂しい思いはさせないと思うから、安心しろ」

そう言われた瞬間、じんと目元が熱くなった。

見抜かれていた?
応援するとか、支えるとか言いながらも、離れてしまったら寂しいとわたしが思ったこと。
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