腹黒司書の甘い誘惑
先生が手振ってくれたー! と、はしゃぎながら去っていく生徒を見つめてから、柊也さんはわたしに視線を戻す。
その表情が少し困った感じだった。

柊也さんはこの容姿なので、もちろん女子生徒に人気。

笹本先生情報によると、校内ではいつも女子たちに囲まれているらしい。

相手は生徒だからしょうがないけれど。

ちょっとだけ口を尖らせていたら、彼はふっと笑った。

「なに、俺が騒がれてるのが面白くない?」

「ち、違いますよ!」

少しね、ほんの少しだけ騒がれている柊也さんが気になったりはするけれど。

ツンと顔をそらしていたら、優しく頭を撫でられた。
視線を向けると、柊也さんが口許を緩めてわたしを見ている。

「周りが俺をどう見ようと、俺の中では君が一番。どんな女も君には敵わない」

目を細めて囁くように言われ、わたしの胸が一気に鳴りだす。

そういうことを平気でさらっと言うのやめてほしい。顔が赤くなってしまう。

「そもそも相手は生徒だからな。おまけに俺が夢中なわけだし。君の勝ちは確定してる」

「は、はい、どうも」

ドキドキして俯こうとしたらわたしの頬に指が触れて、頬の熱を確かめるように撫でられたから、堪らず諦めて柊也さんを見上げた。
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