腹黒司書の甘い誘惑
呼び出し音三回で相手は明るい声で出た。

『もしもし! 仕事終わった?』

「理乃。悪いな……今日会えなくなった。仕事が片付かない」

『え……?』

電話口から聞こえる声のトーンがいっきに下がった。
俺は口許を緩めて、歩道を歩いている。

『どうして……わたし、今日はちゃんと会いたいって言ったよね? 仕事を調整してもらうために、前から言ってたよね?』

理乃のマンションの入り口に着き、エントランスへ入る。

『……忙しいのわかってるけど、柊也さんの誕生日なのに。お祝い……したかったのに……』

悲しそうな声。さすがに申し訳なく思い、間をあけずに理乃の部屋のインターホンを鳴らした。

『あ、え……』

「ウソ」

『なっ……もう!』

ブチッと電話が切れた数秒後に『どうぞ!』と、インターホンから怒った声が聞こえた。
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