腹黒司書の甘い誘惑
そうやって理乃がなんとなくわかってくれるから、俺は愛想を尽かされない程度に彼女をからかったり、意地悪を言ったり、ふざけたりする。

「もう!」と言いながら照れたりむくれた表情をしながらも、許してくれる彼女が可愛いし、安心する。愛情を感じる。
ほらな、甘えだ。

とてもひねくれた甘えだからばつが悪いので、表向きはどうか意地悪ということにしておきたい。

冷たくなっている指先で理乃の首筋に触れた。

「ひゃっ!」

「頬だけじゃなくて全部冷たい。早く君の体温で温めてもらいたいんだけど」

「へ、変なこと言わないでください!」

「玄関で想像しないでください」

顔を真っ赤にして慌てている彼女に面白がる視線を向け、口許を緩めた。

いつも大体俺の部屋に連れ帰っているから、理乃の部屋にはまだ数回しか入ったことがない。

女の部屋、という感じ。
彼女らしいふんわりとした暖色の空間を見渡し、テーブルに用意されている食器に視線を移した。

するとはりきった説明が流れる。

「仕事終わってから作ったの! サラダとシチュー! あとね、ケーキが冷蔵庫に入ってるよ。駅前のケーキ屋さんの。待っててね、用意します」
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