腹黒司書の甘い誘惑
パタパタと俺の横を通ってキッチンへ向かい、ケーキを用意してシチューを温める彼女の姿を見て、愛しい想いが込み上げてくる。

「手伝うよ」

「いいですよ、座ってて。今日の主役だから!」

主役って表現なんだよ。と思いながら渋々テーブルに着き、しばらく待っていると目の前にシチューが運ばれてきた。

「柊也さん、誕生日おめでとう」

向かいに座った理乃は、満面の笑みでそう言った。
温かな湯気と、彼女の笑顔と想い。

胸が優しいものに包まれて、頬が緩んだ。やはり気恥ずかしい。でも、とても嬉しい。

「ありがとう、理乃。美味しそうだな」

「どうぞ、食べて。たぶん味も大丈夫なはず」

俺を見つめて照れながらそう言った理乃に「いただきます」と言った俺は、シチューとサラダを食べた。

言う通り味は大丈夫、美味しい。

「意外と料理上手だよな」

「意外ってなんですか、意外って」

「キッチンで鍋をひっくり返してるイメージだったから、何度か君の料理を食べて美味しいことに安心してた」

「ちょっと……鍋をひっくり返すって、かなりドジじゃないですか」

「君はドジだろ?」

「違います!」
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