腹黒司書の甘い誘惑
「別の予定が入ったの?」

『まあ……』

「どうして……わたしは随分前から一緒に過ごしたいって言ってたのに」

わたしは眉根を寄せていた。
ふざけてウソを言っているなら、早くそうだと言って欲しい。
だけど柊也さんはウソだとは言わなかった。

『……25日じゃ駄目か?』

予定を変えようとしてくる。
わたしは答えず黙っていた。

24日に予約してしまったケーキはどうするの?

「もう、なんで前日に言うんですか」

『悪いな、急で』

「……25日は午前中から会える?」

『いや、夜から……』

それではケーキを無駄にしてしまう。
わたしは大きく溜め息を吐いた。

いっきに悲しさがこみ上げてくる。

ここ数日、柊也さんは生徒の成績を出したりで忙しく、わたしも学期末にまとめる書類が多くて会えなかったのに。

事務室に顔を見に来てくれても、柊也さんはぼうっとしているし。
不安な想いとか、会いたい気持ちとか、前日に言わないでよという怒りが混ざった。

「もういいよ。忙しいだろうし、25日も会わない」

『待った。25日は――』

「いい。会わなくていい!」

そう言ってわたしは電話を切ってしまった。
< 188 / 201 >

この作品をシェア

pagetop