腹黒司書の甘い誘惑
声のしなくなったスマートフォンを見つめ、唇に力を入れる。

クリスマスイブを一緒に過ごすことを楽しみにしていた。
一緒にケーキを食べる姿を頭に浮かべていた。
心がどんよりと曇る。

さすがに今の電話の切り方は幼稚だったかも。
わたしは後悔して柊也さんの番号を画面に出し、電話を掛け直そうかと思ったけど、消してしまった。

だって、急に入った用事ってなに?
わたしは前から24日を一緒に過ごそうって伝えていたし、その時に柊也さんも「わかった」と返事をしていた。

どうしても明日にしないといけない用事なの?
友達? 家族? わたしにちゃんと説明もしないで、歯切れが悪い感じで。不満が込み上げるのは当然だ。

もしかして、言えない人との予定とか……。
いや、まさかね。柊也さんに限ってそんなこと。……だけど最近、柊也さん考え事していたし。ぼうっとしていたし。

まさか女の人じゃないよね?
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