腹黒司書の甘い誘惑
返事をしたわたしは段ボールに近づく。そして顔だけ振り向いた。

「はじめて行くから緊張するなあ。司書さんって、どんな人ですか?」

わたしの問いに答えてくれたのは美鈴さん。
口角を上げて、身を横に出しながら囁くように言った。

「いい男よ」

どきっとした。だって、男性の容姿に厳しい美鈴さんがそう言うんだもの、本当にかっこいいんだ。

ますます緊張してしまう。

「それに優しいし、しっかりしてるから。ね、豊子さん」

「うん。柊也《しゅうや》くんは気が利くいい人よ」

二人の話を聞いて、司書さんをはやく見てみたい気持ちと緊張が混ざりあって脈が上昇する。

段ボールに視線を戻して抱える準備をした。

「い、いってきますね」

そして、ふんっ、と力を入れて持ち上げようとしたけれど、やだこれ重い! 持ち上がっても運べない!

すると、豊子さんが笑いながら言った。

「理乃ちゃん、台車持ってこないと」

「ああ、そうですね……!」

もうっ、馬鹿。
わたしは慌てて近くの用具室に台車をとりにいった。
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