腹黒司書の甘い誘惑
次の日。
わたしは『棚からぼた餅』を持って図書館へ向かった。

朝、自宅で鞄に本を入れてからずっとそわそわしている。
足取りがいつもより速い。

「こんにちは」

どきどきしながら図書館の中へ入り、カウンターにいる柊也さんを見つけて挨拶をした。

本に番号シールをつける作業をしていた柊也さんは、顔を上げて視線をこちらに向けた。

「あ、あの、昨日言っていた『棚からぼた餅』持ってきましたよ」

小走りで柊也さんのそばへ寄り、わたしは本を差し出した。

なんだか張り切って持ってきたみたいで後から恥ずかしくなったけど、引っ込めるわけにはいかないから我慢。

柊也さんは本を見てからわたしの顔を見て、再び視線を本へ。

「ありがとう」

少し、口許が緩んだように見えたのは気のせいかな。

「……さて。今日も頼むよ。予想以上に君の作業が遅いから時間かかってるんだ」

気のせいかもね……。

見慣れた刺のある態度になった柊也さんに、わたしは眉根を寄せていた。
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