腹黒司書の甘い誘惑
図書館への手伝いはそれから数日続いた。

夕方の一時間程度。
最初は本の出し入れで、新しい本を頼みすぎたから手伝ってくれという言葉に当てはまっていたけれど、途中から掃除をしたり飲み物を買いにいかされたり、余計な雑用まで頼まれはじめた。

「これ、ごみ出しといて」

涼しい顔で平然とわたしにごみ袋を渡して言いつけた柊也さんに、顔を顰めるのは当然だろう。

「わかりました」

だけどわたしは文句を言わなかった。
多少態度はむすっとしていたけど。


貸した『棚からぼた餅』の続編を一日で読了した柊也さんが「読んだ。ありがとう」って本を返してくれたとき、二人で面白かった場面を語り合って共感するところが多かった。

そういう会話をしたり、本の手入れをする柊也さんをそばで見ていたら、胸がほわほわしてしょうがなくて。
雑用を任されてもおとなしくしていた。

もっと柊也さんを知りたい。最悪以外の部分を。そういう気持ちがこっそりとある。

ごみ袋を持って図書館を出たわたしは、校舎裏にあるごみ置き場へ向かうため、通路を歩き出した。
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