腹黒司書の甘い誘惑
知りたいことをそのまま質問するわたしに、柊也さんはうっとうしいと言いたげな表情をする。

だけどわずかな動揺が瞳にあるようで、こういう柊也さんは初めて見るからわたしは視線をそらさずじっとしていた。

返ってくる答えにさらに質問する準備はバッチリ。

そんなわたしの雰囲気でかわすのは難しいと感じたのか、柊也さんは呆れたため息を吐いた。

「……紙芝居、俺が読んでる」

「え?」

「近くの保育園で。園児に紙芝居見せてるんだよ」

顔をそむけてぶっきら棒な言い方をした柊也さんを見ているわたしは、意外すぎる回答に瞬きを多くする。

柊也さんが紙芝居を園児たちにしているの?
他にやることって、紙芝居だったの?

そんなことをしているなんて、本性からは想像がつかない。

だから驚いてぽかん、としていた。
そんなわたしの様子を見た柊也さんは、きまりの悪い顔をした。

「だからさっさと帰ってくれる? 準備して俺はもう行くから」

「あの」

「なに」

「紙芝居を見せるってどんな感じかなって、気になるんですけど……」
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