腹黒司書の甘い誘惑
準備をしている柊也さんを園児たちは待ちきれないと言いたげな表情で見つめている。

その姿がなんとも可愛らしいなと思っていると、準備をととのえた柊也さんがテーブルの横に立った。

「じゃあ始めるよ。今日は『ももたろう』です」

優しい声で柊也さんがそう言うと、園児たちははしゃいで喜んだ。

そして柊也さんはゆっくりと語りはじめる。

「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました……」

わたしは穏やかな声で話す柊也さんを見つめていた。

途中、園児たちが、
「ももたろう優しい！」
「ももたろう強い！」
と言うのを柊也さんは笑顔で聞き、そうだね、と頷いていた。

間違いなく、今まで見たことのない優しい表情。
子供たちの前で紙芝居をする柊也さんの微笑みは自然な感じで、温かみがある。

強烈なギャップを見てしまったわたしは、柊也さんから目をそらすことができなかった。
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