腹黒司書の甘い誘惑
お話が終わると子供たちはパチパチ手を叩き、立ち上がって柊也さんを取り囲んだ。

盛り上がる子供たちに「楽しかった?」と微笑み、一生懸命感想を述べようとする子供たちの声を聞いている。

そんな柊也さんと子供たちの姿を見ていたわたしも、自然と笑みが漏れた。

「滝城さんが来るのを子供たちは毎回とても楽しみにしているんです」

はっとして、緩んでしまった口許を気恥ずかしく思いながら視線を隣に向けると、川谷さんがにこやかな表情でわたしのそばに立った。

「彼はいつからここへ来ているんですか?」

「半年前からです。夜まで預かっている延長保育の子供たちへ見せるために園の職員が紙芝居を探していたんですが、貸出している図書館が近くになくて。小学校や中学校の図書にも無く、滝城学園さんはどうかなとお電話したらその時は無いですと言われたんですが、数日後、滝城さんが紙芝居を持ってここへきてくれたんです」

川谷さんは穏やかな瞳で柊也さんと楽しそうに話す子供たちを見つめていた。
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