腹黒司書の甘い誘惑
柊也さんは紙芝居を自費で購入したと言っていた。
それは紙芝居を探していたこの保育園のためだったんだ……。

「そうしたら、滝城さんとわたしのやりとりを見ていた園児が『紙芝居ってなあに?』と聞いてきて、他の子供たちも集まってきて教えているうちにみんな滝城さんに懐いてしまって……子供たちが滝城さんに『紙芝居やって!』とお願いしたのが始まりなんです。無償で月に二回来ていただいて、すごく助かっています」

「そうだったんですか……」

わたしは柊也さんの周りにいる子供たちにゆっくりと視線を向けた。

みんな嬉しそうで、楽しそうで、柊也さんに親しんでいる。
中心にいる柊也さんも優しい表情。

「彼はいつもあんな感じなんですか?」

「ええ。いつも子供たちに優しく接してくださっていますよ」

川谷さんは笑顔で頷いた。
わたしも口許を緩めて笑みを作る。

意外すぎる彼の一面を見つけてしまったわたしの胸は温かくどきどきと鼓動を響かせていた。
< 62 / 201 >

この作品をシェア

pagetop