腹黒司書の甘い誘惑
外へ出ると、日は沈みかけていて薄暗くなっていた。

わたしは先を歩く柊也さんの後をとりあえずついていってるけど、この後は帰るわけだし、くっついていってもしょうがない。

門まできたとき、わたしは立ち止まった。

とりあえず大通りに出て駅の方へ歩いて行けばいいよね。

「あの、今日は連れてきてくださりありがとうございました」

柊也さんの背中にそう声をかけると、道を渡ろうとしていた彼は止まってこちらに振り返った。

「紙芝居とか、あなたがやっているなんて想像つかなかったんですけど……子供たち、良い笑顔で楽しそうでわたしも自然と温かな気持ちになりました。……それでは、失礼します」

「ちょっと待って」

歩き出そうとしたわたしに柊也さんは声をかけた。

もうすでに進むほうに体を向きかけていたわたしは、止まって柊也さんを見る。

「……送ってく」

「え?」

思わず聞き返してしまった。
そうしたら柊也さんはわたしに背中を向けた。

「暗いだろ。自宅まで送ってくから、車に乗って」

淡々とそう言った柊也さんは歩きだし、駐車場へ向かう。

わたしは少しの間固まってどきん、どきん、と胸が鳴る音を聞いていた。
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