腹黒司書の甘い誘惑
これは女性扱い……?
まさかのことに動揺を隠せないまま慌てて柊也さんを追いかけて車へ乗った。

「あ、あの、本当にいいんですか?」

「自宅どこ」

「えっ……と、中央区のほうなんですけど……」

「住所言って」

運転席でナビを操作する柊也さんは早くしろ、と言いたげな瞳をわたしに向けてきた。

急かされて焦りながらも住所を伝えると、柊也さんは速やかにナビへ入力してハンドルを握った。

「君も“一応は”女だから。暗い夜道を歩かせて何かあったら、寸前まで一緒にいた俺が不快になるだろ」

「……そうですね。すみません、ありがとうございます」

これはあくまで己の為だと言いたいらしい。

はいはい。
ハンドルを切る柊也さんの横顔を口を曲げて見ていた。

この人がこういう感じ悪さなのは十分知っているから今更どうってことないけれど。

今日見たあのまったく作っていない優しい雰囲気はなんだったんですか、と聞いてみたくはなる。

猫を被っている彼とはまた違う、心の底からの優しい感じ。

「今日見ていて思ったんですけど。子供、好きなんですか?」

走行する車の中でわたしはそっと訊ねた。
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