腹黒司書の甘い誘惑
「理乃ちゃん、一時期昼休みに図書館に通っていたでしょう? その時にわたしはピンときてたの」

「柊也くんはやたらと本を頼んできたわよね。それからお手伝いを理乃ちゃんに頼んできたし。もしかして理乃ちゃん目当てかしらって、わたしは思ったわ」

美鈴さんと豊子さんは楽しそうな笑顔をわたしに向けてくる。

そういえば、お二人はわたしが図書館に向かうとき気持ちよく送り出してくれていた。
やたらとにこにこしながら……。

「ま、待ってください! 柊也さんとわたしがいい感じだなんて、ありえませんから!」

「えー? でも理乃ちゃんは柊也くんのこと気になってるでしょう?」

「それは……あの……」

「バレてるんだからねー!」

美鈴さんは目を細めて唇の端を上げる。
慌てるわたしは目をそらして縮こまった。

「まあまあ。わたしたちは穏やかに見守るわよ」

豊子さんのなかでは色々と確定されていて、わたしに優しい笑みを向けてくる。

どうしよう!

「ご、誤解です!」

「はいはい」

「何もないですからね!?」

「はいはい」

「本当の本当に誤解ですからっ……! わ、わたし、ちょっとごみ袋片付けてきます!」

「いってらっしゃい」
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