腹黒司書の甘い誘惑
「理事長……? どうなさったんですか?」
横からそっと声をかけると、理事長はこちらに顔を向けた。
理事長の足元にはマーガレットが咲く長方形のプランター。
昇降口に並んでいる中の一番端にあるものだ。
「この花だけ元気がないんだ」
眉尻を下げる理事長はとても心配そうだった。
わたしはプランターの前で屈み、花を見る。
「陽当たりが悪いんでしょうか……ここってちょうど影になって陽が当たらないのかも。他のプランターと比べて土が湿っていますし」
「ああ、そうかもしれないな」
頷いた理事長はプランターを持ち上げて、陽の当たる段差の下に運んだ。
やさしい眼差しで花を見つめている。
その横顔の雰囲気が本に触れる柊也さんに似ているなと感じた。
兄弟なんだなと、今は素直にそう思える。
そんなことを思いながら理事長を見ていたら、理事長の視線がすっとこちらに向いた。
反射的に背筋が伸びる。
「まだ図書館に通っているのかい?」
「いいえ。もう手伝いは終わったので……」
「そうか」
こちらに歩いてきた理事長はわたしに向けていた視線を落とした。
その仕草から、なんとなく感じ取った。
横からそっと声をかけると、理事長はこちらに顔を向けた。
理事長の足元にはマーガレットが咲く長方形のプランター。
昇降口に並んでいる中の一番端にあるものだ。
「この花だけ元気がないんだ」
眉尻を下げる理事長はとても心配そうだった。
わたしはプランターの前で屈み、花を見る。
「陽当たりが悪いんでしょうか……ここってちょうど影になって陽が当たらないのかも。他のプランターと比べて土が湿っていますし」
「ああ、そうかもしれないな」
頷いた理事長はプランターを持ち上げて、陽の当たる段差の下に運んだ。
やさしい眼差しで花を見つめている。
その横顔の雰囲気が本に触れる柊也さんに似ているなと感じた。
兄弟なんだなと、今は素直にそう思える。
そんなことを思いながら理事長を見ていたら、理事長の視線がすっとこちらに向いた。
反射的に背筋が伸びる。
「まだ図書館に通っているのかい?」
「いいえ。もう手伝いは終わったので……」
「そうか」
こちらに歩いてきた理事長はわたしに向けていた視線を落とした。
その仕草から、なんとなく感じ取った。