腹黒司書の甘い誘惑
一区切りだというようなタイミングで静かに風が吹いて、理事長の横髪が揺れた。

「……すまない、余計な話をしてしまった。花の様子も見れたし、校舎に戻るよ」

「あ、はい」

理事長はいつもの穏やかな笑みを作り、わたしの横を通って出入り口に入っていった。

その後ろ姿を目で追い、はっと気づいた。

まずい、早く駐車場に行かないと!
わたしは慌てて急ぎ足で駐車場へと向かった。

絶対機嫌悪くなってる……!


「遅い」

思った通り、駐車場で車のドアを開けると、柊也さんは運転席で腹の底から不機嫌だと言いたげな声をだした。

「す、すみませんっ」

急いできたからわたしは息切れ切れで謝る。

険しい視線をわたしに向けていた柊也さんは、切り替えて前を向きサイドブレーキをといて車が進みだした。


わたしの所為で保育園に着くのが大幅に遅れてしまった。

けれど川谷さんは笑って出迎えてくれたので、わたしは申し訳なくてぺこぺこと謝った。

子供たちはやっと柊也さんが来て嬉しそう。
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