腹黒司書の甘い誘惑
自分の態度に頭を抱えたくなる。
からかわれたら上手く対抗できるだろうか。

ああもう、気持ちが落ち着かない。


柊也さんが一通り子供たちと遊んで、帰るために保育室を出ると職員室の前で若い女の先生が二人、ちらちらと柊也さんを見ていた。

前回はいなかったけれど、いままで何度か声をかけられているようで、会話をしていた。

「滝城さん、いつもありがとうございます! 子供たちすごく楽しみにしていて、滝城さんが大好きなんですよ」

「それはとても嬉しいです。みんな本当に可愛いから、僕もここへ来るのが楽しみなんです」

相変わらずの人当たりの良い態度。

女性に声をかけられても余裕で、ちょっとした仕草も綺麗で、見た目は完璧な紳士系。

頬を赤らめている先生たちに「この人格嘘ですよ」と横から言いたくなるけど、実行はしない。

「では失礼します」

微笑んで会釈をした柊也さんに先生方もにこにこしながら頭を下げ、数歩離れた場所でわたしもお辞儀をして保育園を出た。
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