腹黒司書の甘い誘惑
そんなに理事長が嫌いなのか。
兄弟喧嘩を拗らせたのかな。そうならお互い大人なんだし、柔軟になったほうがいいと思う。

「理事長はあなたを気にかけているのに、あなたは理事長が嫌なんですか?」

理事長と話をしているときは遠慮ができていたのに、柊也さんには踏み込んだ質問をしてしまった。

「このくらいなら大丈夫かも」と勝手に思っていた。浅はかだった。

柊也さんはきつい瞳をわたしに向けた。

「君には関係のないことだろ」

先程よりも冷たい声でそう言った柊也さんに、わたしはひるむ。

確かに他人のわたしには関係のないことだ。
だけど、お節介だとはわかっていても気になってしまうし、なんだか放っておけない。

「でも、理事長はあなたと……」

歩み寄りたいと思っているはすだと、そう伝えようとしていた途中で柊也さんがわたしの座るシートに手をついて、顔を近づけた。

そばにある冷ややかで綺麗な顔にゾクリとして、鳥肌まで立った。

「結局君もなんだな。理事長、理事長うるさい」

呆れたような声と瞳。
わたしは固まって動けなかった。
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