腹黒司書の甘い誘惑
「わざわざそんなことを言いにきたの?」

呆れた声を出した柊也さんは、軽蔑した笑みを作る。
わたしは握る拳に力を入れ直した。

「悪いと思ったから謝りたかったんです。そうやってずっと不機嫌な態度をされたままだと嫌だし……」

足元を見てそう言うと、柊也さんは息を長く吐いた。

「あっそう。ご苦労様」

淡々とした声。胸にズキンと痛みがはしった。
ここまで冷たい態度をとられると挫けそう。
息が苦しくなってくる。

「もう言うことがないなら帰ってくれる?」

カウンターの外側に立って本を確認している柊也さんは、こちらを見ずに冷たい声を出した。

その態度でわたしはもう、躊躇うものを吹っ切った。

「……気になったから、放っておけなかったんです。ご兄弟同士、何かあって今の状態なんでしょうけど……あなたの事だから気になって、解決できたらいいなって、そう思ったから踏み込んでしまったんです」

正直なわたしの気持ち。
柊也さんの手元が止まり、彼の視線がわたしを捉える。
こちらを見る柊也さんは少し驚いているような感じがした。
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