腹黒司書の甘い誘惑
でも止まらなかった。
心の隅に置いていた想いはいつだってわたしの胸を高鳴らせていたから。

最低な人だと思ったあと、そのまま吹っ切れる予定だったのに。

柊也さんと関わるうちに、とんどん彼に惹かれていった。

だけどわたしの想いは柊也さんには届かなかった。

上手くいかないだろうということはわかっていたのに、こうして破れると予想以上の悲しみが大きな波になって襲ってくる。

伝えたって叶わないのに、どうして想いは勝手に溢れちゃうんだろう。

自分の中にとどめておけないのだろう。

思ってたより辛い……。

喉奥が苦しくなって、はあーと長く息を吐きだすと、わたしの体は震えていた――


それから色んなことを思い返しながら自宅まで帰ってきた。

柊也さんの言葉、自分の言葉。
繰り返す度に胸が詰まった。

部屋のソファーに座ってぼうっとして、考えるのをやめたくてつけたテレビの音も、耳から入ってくると煩く感じてすぐに消した。
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