目があうたんび
居残りはもちろん。掃除か…



補習の方は早めに終わったから、良いけど。



ほんとツいてない。



ガラガラ



思ったより準備室は汚かった。


「こんなん一人でやるの?あのハゲザルめ!」



にしても、琴葉さすが!ハゲザルは傑作だよ!ハゲてて猿みたいな顔したおじいさん。



「テキトーにやって帰ろ。」



と言いつつも、汚いところを一つずつ丁寧に掃除するのがあたしの唯一の長所だと我ながら思う。



「終わった!」



首をポキポキならして時計を見るとぎょっとした。



「8時45分…各駅は無理そうだし…快速乗るか…」



快速はあんまり好きじゃないけど遅すぎて親に何か言われるのも嫌だし…



電車に乗り込みギュウギュウの中で息をするのも一苦労だった。



これが、快速の悪いとこなんだよね〜



一人で納得していると、お尻にゾッとする感覚がした。



え?これって…痴漢??嫌だ嫌だ。



だんだん、力が加えられて泣いてしまった。声も出ずただただ涙を流していた。



君が助けてくれた。



「やめた方がいいんじゃないですか?いい歳して。」


「えー。何、痴漢?」「やーねー」


「お、俺は何もしてねー!」


「なこちゃん!こっち。」



俊さんだ!どうしよう。変な泣き顔見られた!こんな時に限って変なことを考える自分。



俊さんにドア側に連れて行かれた。



「これで大丈夫。声出さないと!て、無理だもんね。ごめんごめん。怖かったよね。大丈夫だった?」


あたしは泣いてしまった。



「グスッ怖かったよ。グスッもう嫌だ。」

「うんうん」


と言って抱きしめられた。



え?嘘?



抱きしめられてあたしも少し安心して泣き止んだ。窓に映った自分の顔はヒドかった。



あたしは君に見られたくなかったからうつむいてたんだ。



「なこちゃん。着いたよ。行こ!」


「ほんとにさっきはありがとうございました!あたし俊さんに迷惑かけっぱなしで…」


「そんなことないよ。もっと、頼ってもいいぐらい。」




「見て〜あの男の人めっちゃかっこいい!隣の子彼女かな?」


「ほんとだ。彼女もちかよ…」








ちらっと俊さんの方を向いた。チャンスだよね?


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