あるワケないじゃん、そんな恋。
声震わせてるよ。
ホントなのかな。


「ふぅん。そっ」


素っ気なくしてやろ。
どんな反応するか楽しみ!


「お前……信じてねーだろ!」

「うん!信じてない!」


痩せっぽちの羽田の顔が真っ直ぐとこっちを向いた。
鼻の頭が赤いのは寒さのせいだとしても、その顔全体赤いの絶対変だよ。


照れてる。

だから、皆の言うことホントかな…って思った。


はぁ〜〜って大っきな溜息ついてしゃがみ込んだ。

この落胆ぶり。
やっぱ童貞なんだ。


「くっそー…飲みってこぇーなぁ…」


しゃがみ込んだまま独り言?

それって何なの⁉︎ 後悔による嘆きな訳⁉︎



「羽田ぁ…そろそろ正直に言いなよ。童貞君なんでしょ?ホントは」


クスクス笑いながらしゃがみ込んだ。

目の前にある毛糸帽子のボンボンが揺れてる。
深緑色の帽子は、おばあちゃんの手編みだって言ってたっけ。


「私のこと恋愛処女だとか言って相当バカにしてたけど、自分も案外そうなんじゃないの?私怒ったりしないから正直に言いなよ。童貞ですって………ギャッ!」


ゴツン!と勢いよく額ぶつけてきた。
目の前に星がチラつく。


「ふざけんな!」


声と共に羽田の顔がマジで怒ってる。
ヤバい、私、言い過ぎたのかも。


「俺は童貞じゃねーって言ってるだろ!誰の言葉を信じてんだ!」


「だ、誰って……」

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