あるワケないじゃん、そんな恋。
プイッと背中向けて出て行っちゃった。

自分ばっか言いたいこと言って意味わからん。



「私が言ったことって何よ⁉︎ 」


あんな中途半端な言い方して逃げないでよ!

何言ったのか気になるじゃん!



「……ホントに何て言ったの……?」


う〜〜ん…って、一生懸命頭悩ませるけど思い出せない。

朝から頭痛がして、体だるくて仕方なかったことしか。



納得いかない。


でも……これで少しは救われた…?

芹那ちゃんが休みの間、羽田に近づくチャンスも無くなったことだし。



(……って言うか、嫌われたんじゃないの⁉︎ これ……)




……オドオドしながら店内に戻った。

羽田は自分の持ち場にいて、私の方など見向きもしない。


「菅野ちゃん、具合良くなったんだ」

「平気?」


「あ……すみません…。もう大丈夫です……」


クマさんと店長に愛想笑いしてレジについた。

ちっとも顔を見せようとしない羽田の態度に胸が痛む。



私が言ったことって何?

そんなに怒るようなこと言ったの?



……こんなこと初めてだと思う。

羽田が私のこと無視するなんて。


ぎゅっ…とポケットの中のミニタオル握りしめた。

さっきの優しさは錯覚なんかじゃない…って、どこかで自分を慰めたくて。

恋に発展しそうにない羽田との関係は、ひょっとしたらこのまま終わるのかもしれない。

お互いの物、交換しただけで戻らない、一方通行の想いだけ残して……。



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