あるワケないじゃん、そんな恋。
「……悪いけど芹那、俺はお前に対して近所の幼馴染以上の感情は持ち合わせてねぇんだ。だから女としては好きにならねぇと思う。可愛げも女らしさもねーけど、こいつのことが好きだから」
そこで指立てるのナシにしてぇぇ〜〜!!
後が怖いぃぃ!!
ムッとした芹那ちゃんがキッ!と睨みつけた。
般若を通り越して鬼になってる。
節分にはまだ早いよ。
お願いだから、角引っ込めてぇぇ…!
「……………」
目の渕にどんどん涙が溜まってくよ。
それでも泣かないなんて、どれだけ強いの。この子………。
「あ…あの……羽田さん……」
思わず「さん」付けで呼んじゃったよ。
何やってんのよ私はっ!
「何だよ…」
ニヤニヤしながら返事しないで!
困るでしょーがっ!
「……手、離してやってくれませんか?ここ…かなり目立ってますから………」
他の通路にいたお客さんまで集まって来たよ。
レジにいるバイト君以外に、店長やクマさんまで。
「芹那ちゃんが困ると思うから早く……」
瞬きした瞬間、涙が零れ落ちてきそうなの。
早く解放してやって………。
可哀想だから………。
「………悪ぃ…」
パッと離された腕がダラン…と垂れ下がった。
その腕の掴まれてたところを、芹那ちゃんがぎゅっと握りしめる。
「………………」
唇を噛み締めたままで歩きだした。
羽田に背中向けて、涙見せないようにして。