あるワケないじゃん、そんな恋。
俺みたいなしがない本屋の社員とか将来性ないから別れる…って言ったよな。

顔だけはやたら良かったのに、性格は高飛車で高級志向で。

付き合いだした頃はそんな女じゃなかったのに、どんどん入れ知恵されてさ。



(……でも、それって大分前だぞ……)


ここ一年くらいは誰とも付き合ってねーし、まぁ遊ぶくらいの女は何人かいたけど……。


(でも、後腐れないヤツとしか会ってねーし。一晩だけ相手したら会わねーようにしたし)


まさか、その中の誰かが店長たちと知り合いで俺達のこと見てたとか?


(…それでも別にいいじゃん。本気で付き合ってんだから)


これまでみたいに売り言葉に買い言葉的なもんじゃねーぞ。

菅野のことちゃんと好きだと言ったし、彼女として見ようと思ってる。

今までよりも優しくしてやろう…とか、俺なりに考えてたのに……。



「話しかけるな…とかあり得ん!そう簡単に逃がすかっ!」



俺があいつの初めてを全部引き受けるって決めたんだ。
他の男に渡せるか。



「ーーとにかく釈明しに戻るか、店に…」


蒔いた種は刈らねーとな。

男としてのプライドにも関わる。




(しかし、飲みってホント怖ぇーよなぁ………)



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