あるワケないじゃん、そんな恋。
「………早ぇな…」


ぶーたれて窓の外見てるよ。
私がサッと逃げたのが、どうも気に入らなかったみたい。

でも、そんなに簡単に触れられたくないよ。
観覧車の中、ユラユラして危ないし。


(転ぶのもヤダしね…)


初めてのイブデートがこれから先もずっとトラウマで残りそうだなぁ。
忘れるようなこと起きないかなぁ…。




「もうすぐ終了でーす!」


呑気そうな声が聞こえてきた。
いつぞやの最悪な記憶が蘇る。

ドックン、ドックン……って、変な心臓の高まりまで加わってきたよ。


(足がもつれそう。大丈夫かな……)


カチャ…と扉が開けられた。

先に羽田が出て、後から私が降りようとしたら………



ふわり……と体が浮いたの。

羽田が私を抱きながら降ろしたから。


「○、△、□、@、☆……!?」


言葉にならなくてごめんなさい。

ビックリし過ぎて声も出なくて。


足の裏が地面に着けられるまで、羽田が私を抱きしめててーーー



「…転ばなかったろ?」


カッコつけて笑うもんだから、胸がどうにかなりそうでっ!!



「イブの続きしに行くぞ!映画でも観るか?それともゲーセン?」


普段と変わらない態度で接するのもやめて。
こっちはまだ胸がドキドキいってんのに!


「格安っ!もう少しいいトコ連れてって!」


胸が鳴るのを隠しながら言うのも必死なのに、羽田はいつも通りの感じで照れもない。

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