あるワケないじゃん、そんな恋。
涙目になって訴えることなのかよ。
「捻くれるのやめる」って言った割には、まだ相当捻てんじゃん。



「…泣くなよ……」


怒ったフリして悪かったよ。
お前に信じて欲しかったからやったんだ。


「泣くよ。羽田がどっか行きそうだったもん…」

「行かねーよ…」

「ホントに⁉︎ 」


あーあ、涙一粒溢れた。
ウルウルした目見せて、可愛いヤツ…。


「ホント。どこにも行かねーって」


これからずっと夜まで一緒にいて、今夜こそ菅野と熱いチューしたいから!


「ホント⁉︎ 絶対よ!」

「…はいはい。絶対どこへ行きませんっ!」


上着の端っこにぎりしめたまま泣くなよ。
ガキ泣かしてる気分になるだろう。


「菅野……?」


俯いてる顔を下から覗いた。
ハンカチで隠してる顔の隙間から、ピーチカラーの唇が見える。


薄いけど見た目より柔いんだぁ。
減らず口たたくけど、可愛いーことも言うんだよ、この口が。



(あ〜〜!チューしてぇぇ……!)


そればっか考えてるって?
だから、フツーの男だって言っただろ。


「泣くの止めろよ。次行くぞ!」

「どこ行くの?」


泣きながら聞くなよ。
てんでガキだな。


「映画観よ。それから100均行って俺にクリプレ買ってくれ。何個まで買っていい?1万くらい?」

「バカ!そんな買って何すんのよ!千円でおしまいにして!」

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