あるワケないじゃん、そんな恋。
一睡もしないまま夜が明けた。
冷え込んできた空気に気づいて窓の外を見たら、ちらちら雪が舞い降りてる。


冬だから当たり前のことなのに、何だか嫌な予感がしたの。

羽田との間に、波風が立ちそうな気がしてーーーー。






パリッ。


水溜りに張った薄い氷を踏んづけた。

職場へ向かう足取りは重くて、いつぞやの二日酔いの朝みたいな雰囲気。


……今日の羽田は、どんな顔して出勤してくるだろう。
遅番だから昼前にならないと来ないけど……。


(こういう時に自分が先に出勤というのもヤダな。敵を向かい入れる前の心構えみたいなのがいる……)



羽田は敵じゃないけどね。
そういう気がするってだけ。




「菅野ちゃん、おはよう!」

「…おはようございます。クマさん…」


ハァッ……って深い溜息出ちゃう。
クマさんはそんな私の様子に首を傾げ、こんなことを言い出した。


「去年の暮れ、羽田ちゃんが同じ顔してたな」


クリスマスの当日だったかな…と話し始めたのは、私がインフルエンザで休んでた時のこと。


「妙に気落ちした顔で出勤して来てさ、何かあったのかって聞いたら、『別にぃ…』って素っ気ないんだ。話せばいいのに抱え込んじゃって。あの時と同じだなぁ…と思った」

「あの時…?」

「うん、あの元カノと別れるの別れないの…と揉めてた時期があってさ、それと同じだなぁ…って」


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