あるワケないじゃん、そんな恋。
「菅野、レジ打ちして!」


スタスタ…と寄ってきた羽田は私と男性客との間に割って入って、さっさと脚立を片付けだした。

顔も見せずに冷たそうな声で、見える横顔は何だかスゴく不機嫌で。



(ーー昨日のこと、まだ怒ってるんだ…)


私が怒鳴って逃げたから。


(そっか……それで探してもくれなかったんだ……)


何だか一気に落ち込んで、その場で泣き出しそうになったけど。

どこかで自分にもプライドみたいなものが働いて、絶対に泣くもんか!と我慢した。



「…分かりました。羽田さん…」


私はパートだもんね。

ここでは羽田が上役だから、わざと「さん」付けして逃げた。


それでまた距離が生まれるなんて、思いもしなくてーーーー。



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