あるワケないじゃん、そんな恋。
「でもなぁ…あいつ、こんな乙女チックな子が好きだったっけ?…」


少々疑いたくなる気持ちもあるけど………


「試して損ないか!先ずは行動するべし!」





業務が終わった午後6時。
クリスマスに近い今頃の時期は、既に外も真っ暗。
街灯はとっくに点いてる。イルミネーションも一緒にね。



「なかなかキレイじゃん!」


駅までの道のりを羽田と歩く。
これまでも何度となく、同じことはしてきたけど。


「いいよね、クリスマスムード満載で!」


わざと気分盛り上げる。
だって、隣にいるのは恋の練習相手だから。


「……ああ、まぁな」


ーーって、何なのさ、その暗さ!
ウソでもいいからノってよ!
つまんないでしょ!


「来週が本番だね〜。皆、今頃悩んでるんだろうね。プレゼントとかパーティーとか、いろいろとさ……」


私たちは関係なく仕事だけどね…と振り向く。
殆ど身長差のない羽田が、目線を下げてこっちを見た。


「羽田はどうする?イブは何か予定あり?」


恋人達の一大イベント。
クリスマスは大いに盛り上がらないと!


「…ないけど……それより菅野、お前さ……」

「んっ⁉︎ 」


斜めに上体傾けて、覗くように顔を見上げる。
瞼を二、三回パチパチと瞬きさせて、口角をキュッと持ち上げた。


「…………っ!」


羽田の顔が一瞬だけ仰け反った。
緩んでた頬に力がこもる。

意識したってこと?
今の私の表情に。



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