あるワケないじゃん、そんな恋。
(しめしめ。作戦成功!)


心の声は押し殺して、とにかく次の作戦に出る。


「なぁに?」


一歩近づいてみる。


避けるように上体を揺らし、狼狽えてる羽田が面白い。


「……いや、別に。何でもねぇ……」


明らかに赤い顔してるよ?
確かに今、少し動揺したよね?


「……イブはお互い仕事だからつまんねぇな。仕事引けてからどっか行くのもアリだけど、行きたいとこってあるか?」

「…連れてってくれるの⁉︎ 」


つま先立ちで胸の前で手を組み合わせた。
そのまま首を傾げて、顎に人差し指をくっ付ける。


「どこが良いかなぁ。展望タワーから見る夜景とか?街中のイルミネーション見ながら歩くのもいいよねぇ。レストランとか人多いから無理だとしても、ケーキくらい食べたくない⁉︎ イブなんだからさ…」


夢見るように視線は上を向いて。
本当はコタツにミカンくらいで丁度いいけど、それじゃあ羽田が喜ばないだろうから。


「夜景にイルミネーションにケーキか……」


う〜〜ん…って悩んでるよ。
アホだねぇ。



「……まあいい。どれか叶えてやる。今日のお詫びも兼ねるから」


「お詫び?」


「お前の初チュー奪ったお詫び。あんな形で実現されて嫌だったろ?」


「えっ……」


何⁉︎ その眼差し。
憂いを含んだような目で見るのやめて。

何だか私が惨めじゃん。
そりゃ確かに、すっかり捻くれてはいるけど。



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