あるワケないじゃん、そんな恋。
「ゴホン。……まあいいか。そんなに言うなら教えてやるよ。今からバス乗って、とある施設に行く。お楽しみはその後だ」


「えー…それじゃあ何だかちっとも分かんない!」


「いいから。ほら、あのバス乗れって!」


「んっ?」


指差されたバス停に到着したバスは複合施設行き。
映画やショッピングが一緒に楽しめる場所として、街中でも有名な所だけどーーー。


「あれに乗って遊びに行くの?もしかしてゲーセンとか?」


羽田音ゲー大好きだもんね…と考えながら言った。


「ばーか。イブにゲーセン行くとかあり得んだろ!俺はそこまでゲームオタクじゃねーよ!つべこべ言ってねーで、さっさと行けって!ほら!」


ぎゅっと握られた手があったかい。

ホカホカする感触に驚いて羽田の顔を見上げた。


「暖かいだろ!コレのおかげで!」


掌広げて見せてくれたのはカイロ。
ニヤッと笑った羽田は、そのカイロごと私の手を握った。


「お前、寒がりだろ。その辺俺と似てるから喜ぶかなぁ…と思ってさ」


小走りしながら喋ってる。
ポンポンと揺れる帽子のフサ越しに、赤い耳の羽田を見た。

鼻先と一緒に頬までが赤い。

…これは寒さのせい?それとも………





(照れてる……の……?)


どっちつかずな感じで乗り込んだバスには大勢のカップル。
ビックリして羽田を見ると、チラリとチケットを見せられた。


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