あるワケないじゃん、そんな恋。
「このバス、予約券なしだと乗れねーんだよ」


「えっ⁉︎ 何で…?」


「それは乗ってれば分かるって!」


意地悪く言うと、チケットで指定された席に行った。窓際に私を押し込み、自分は隣の席に座る。

そのうちバスは走り出して、私は窓の外を眺めた。





(わぁ……)

目を見張るようなイルミネーションの数々。

街中のイルミネーションを辿りながら、どうやら目的地へ向かうみたい。



「……今日だけの特別便なんだよ」


後ろから羽田が声をかけてくる。
驚きながら振り返って、「もしかして…」と聞いてみた。


「…このチケット買うために夜更かしか何かした?…」


目の下にクマがあるのはそのせい?


「夜更かし…つーか、並んだ。…チケット売り場の前で。…でも、この乗車券の為じゃねーぞ」


「えっ⁉︎ じゃあ何の…?」


「それ今言ったらつまんねーだろ。とにかく今は外見とけ!イルミネーションと夜景、一緒に楽しめるから」

ぐいっと両手で頭を挟まれた。
無理矢理のように外を向けられ、窓の向こうに広がる光を目にした。


橋の袂に掛けられてる電飾は、アーチ状に点滅してる。
街路樹には全てブルーやホワイトのイルミネーションが施してあって、まるで外国みたいな雰囲気。

ビル街もショッピング街も、道行く人たちでさえも飾られてる様に見えるのは、きっと限られた空間から見てるせいだと思う。



「きれい…。しかも寒くなくていいっ!」


「だろ⁉︎ 」


寒がりな私にはもってこいの企画。

羽田は自分も寒がりだから、コレに決めて良かった…と呟いた。


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