あるワケないじゃん、そんな恋。
窓に映ってる羽田の顔がさっきから面白いくらいに百面相してる。

視線が上を向いたり下を見たり、まるで定まってない感じ。

唇も開けたり閉じたりして、まるで落ち着きがないんだから……。


(……フッフッフッ……私が夜景にだけ見惚れてると思ったら大間違い!ちゃーんと観察してんのよぉ。羽田がミニスカに動揺してるのだって、きちんと気づいてるんだから!…寒いからどうしようか迷ったけど、思いきってチャレンジしてきて良かった!
スカートの下には120デニールの厚手タイツと毛糸のパンツまで重ね履きしてあったかくしてる。ブーツもロングにしたし、ヒールは低めのにしたから転ける心配もないと思う。…後はどのタイミングで泣くかだけ!日頃の練習の成果が発揮できるといいけど……)


「フッフッフッ……」


「何だ⁉︎」


「いーえ!何でも!」


マズいマズい。変な声出ちゃった。


羽田がマジで不気味がってる。

ムード盛り上げないと……!



「ねぇ…?」


振り向きながら足組んで、お色気モードに変身よ。


「複合施設に行って何するの?映画でも観る?」


今なら始まったばかりのロードショーが山ほどあるよね。

SF映画も話題だし、マンガが映画化されたのもあった気がする。

コメディーもいいけど、冬だからホラーだけは勘弁して欲しいなぁ。



「……映画なんか観ねーよ。お前のリクエストにねーもん!」


あっさり一等打人か。

面白くないなぁ。羽田は。


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