あるワケないじゃん、そんな恋。
「ブハッ!!」



吹き出すような声を出した羽田が、お腹を抱えて笑いだした。



「な……何だよ、それ!……どんだけなんだよ、お前………!」



あははは…!と高らかに笑う羽田の声は、ゴンドラ内に響いた。

恋愛経験ゼロも大概にしろよ。普通よりも格安だぜ、このプラン……と笑うやつを、苦々しい思いで見ていた。


「し…仕方ないでしょ!!ホントに初めてのデートなんだもん!!イブなんて、これまで家族か友達としか過ごしたことなかったし、たった1日の為にチケット売り場に並んだり予約券買ったりするの、意味がわからんから……!」


物好きでないとしないことだと思ってた。

頑張ってくれた羽田には悪いけど、私はここまでの気合いは求めてない。

自分なりに考えた方法で羽田を喜ばせといて、落とすことしか考えてなかった。



……今の私は、反対になってる。

羽田の考えたプランに翻弄されて、あろう事か少し嬉しい。


陥れようと考えてた相手に喜ばされるなんて、何よりそれが一番気に入らない。



「…いいじゃん。さっきのバスん中みたいに素直に喜んでりゃ!」


「えっ…?」


「『ありがと』って言っとけばいいんだよ。こういう場合」



あっさり解答を突き付けられた。
それができれば言うことないけど…………






(できるワケないでしょ!!羽田を陥れることしか考えてこなかったのに……!)

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