あるワケないじゃん、そんな恋。
ぎゅっと手首を握り、手に持ってたシューケーキにパクついた。


「あっ!!」


「…うめ〜!」


してやったりとニヤつく俺を、菅野はまたしても呆然と見てる。

その顔を見た途端、あのファーストキスをした時のことを思い出した。



(やばっ…!ついいつもの習慣で……)



友達感覚でやっちまった。
今日は彼氏として接するつもりだったのに……。


手首を掴んでた手の力を緩めた。
菅野はケーキの箱をシートの上に置き、俺の方に食べかけを向けた。


「……この続きは羽田が食べて!私はこっちの箱の中のを食べるから」



急にしおらしくなった菅野を不思議に思いながらケーキを手に取った。
シートに戻った俺を確認するかのように眺めて、菅野はブーツを脱ぎだす。



「……何してんだ?」


「ん?ああ、ブーツ脱いで足上げようかと思って……」



さっきから動きにくくてやれなかったんだよね〜と、ファスナーを下ろし始める。

チェックのタイツを履いてる足を見せ、揃えるようにして斜めに上げた。



「はぁ〜〜落ち着く〜〜!!」


……っておい!

そんな体勢で食うなよ!

今度は俺が困るだろー!!



「美味し〜!クマさん達の言ってた通りだ〜!」


膝の上でケーキの箱を広げて食べ始める。
一つ一つ味の違うシュークリームの山を崩しながら食べては、子供みたいにはしゃいでる。




(………全く、天然ってこぇ〜なぁ……)

< 47 / 209 >

この作品をシェア

pagetop