あるワケないじゃん、そんな恋。
寒風の吹き荒ぶ中、10日ぶりに通勤。

今日は早番。だから9時半から勤務して16時半には上がる。


(しがないパート勤務だからなぁ……病気で休むと給与減って厳しいよねぇ……)


オシャレするお金あったら、少しでも貯金に回しておきたい。

このまま正社員の仕事にも就けず、パートやバイトで一生送ることもあり得るもん。


(…このままずっとおひとり様の人生歩むのかもなぁ……)



気分って上昇しないもんよねぇ。
特にこの冬は、凹むこと多過ぎて。


(それもこれも、全部羽田のせいだ。私のこと恋愛も処女のままでいいのか…なんて煽ったりするから……)



挑発に乗るんじゃなかった。
自分が一番大バカだ……。



駅前から歩き始めて10分足らず。

国道筋に見えてくる青い看板。



ゴクッ。


唾を飲み込む。

何があっても羽田は無視する。

そうしようって決めたーーー。



古本屋の裏口のドアノブを握り、キィ…と開いて中へ入る。



「あけましておめでとうございま〜す!」


努めて明るく。
そう思って顔を上げたらーーー



(ゲッ…!)



目の前に深緑色の毛糸帽子。

ヤバい!羽田だ……!




「あっ……菅野ちゃん!おはよ〜っす!おめでとー、全快したんだー!」

「えっ?…あっ…はいっ!すみません。長いこと休んで……」

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