あるワケないじゃん、そんな恋。
脇から声をかけてきたクマさんに視線を向け頭を下げる。
深緑色の帽子を気にしながら、オドオドして前へ向き直った。




(あれ……?)


毛糸帽子を被った人は、くるりと振り返った。

羽田じゃない。

羽田の帽子を被った………女の子………。



「あっ…菅野ちゃん初めましてかぁ〜。こちら年末に入ったバイトの結城 芹那(ゆうき せりな)ちゃん。羽田ちゃんの知り合いらしいよ」


「初めまして。菅野さん」


ピンクの頬っぺたの子が、人懐っこい笑顔を見せた。
茶色の髪に軽いウエーブがかかってる。

小さくて丸い目は二重で、色の綺麗なグリーンシャドウを塗ってる。
パールの入ったピンクグロスは、色白な肌に映えてウルウルしてるし首も細っ!

アニメ系っぽい感じ……?


可愛い………。




ぱっと見、羽田の好みってこんな子だよね…と思った。

こんな子に告られたら、あいつ直ぐにでも靡きそう……。



「あっ、菅野ちゃん来た⁉︎ おめでとー!風邪引いて大変だったねー!もう平気ー?」


奥の事務所から出てきたのは店長の佐々木さん。
タレた目尻を更に下げ、人の良さそうな笑みを浮かべて寄ってくる。


「すみません、店長……年末の忙しい時期に風邪なんか引いて……ご迷惑おかけました……」


謝りながら親に持たされたお年賀を手渡した。


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