あるワケないじゃん、そんな恋。
店長に愛想笑いを浮かべて持ち場に行った。
久し振りに並ぶ恋愛小説の棚の埃を落としながら、本を綺麗に並び替える。



(そっか……お小遣い欲しさに本を売りさばく客が出る季節になったんだ……)



お年玉だけでは足りない分を補おうと、本を売りさばく客が出る季節。

古本は売ってもなかなかお金にならない。

シミやシワがあったら無料で引き取ってもらうだけになる。

ある程度のお金にしようと思うなら全巻セットでないと難しい。

そういう客は店に持ってくるお金も惜しいから、電話一本で自宅まで取りに来てもらうんだ。



(……という事は、帰ってくるまで顔を合わせなくて済むってことか……良かった……)



安心しながら仕事を進めた。

羽田の知り合いだという彼女は、クマさんの指示でレジ打ちから始めるみたい。



(どういう知り合いなんだろ……)



どう見てもあの子は私達よりも年下っぽい。
大学生か下手すると高校生って可能性もあるよね。

ふわふわモヘアのセーターにフレアのスカートかぁ……。
お似合いだなぁ。



自分の格好と見比べる。

ロングトレーナーにスキニーパンツの私は、芹那ちゃんに比べたら完全に女子力半減してる。

おまけに年末カットにも行けなかったから、ヘアスタイルもボサボサのロングのまま。


(あーあ…。あんな子が目の前で仕事するとなると、いろんな意味で更に落ち込むなぁ……)

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