あるワケないじゃん、そんな恋。
「…付き合うって言ったの取り消す。もう二度と、一緒に飲みにも行ったりもしないっ!」


泣き出しそうな顔して言うことかよ。

第一、何だよ。

その宣言は……!



「あっ…!菅野………!」



ダッシュして逃げやがった。


クソォ…!

またかよ…!



「チッ…!」


思わず舌打ち。

締まらなねぇな、俺は……。




「あの……洋ちゃん………」


声に気づいて振り向いた。



(ーーそうだ、芹那がいたんだった……)



「さっきはごめん。言い過ぎた…」


できの悪い妹と同じ感覚でいた。

芹那は実家の隣に住んでる子で、小さな頃からずっと知ってる。

俺のことも兄のように慕ってて、妹以上に懐いてるから可愛がってたんだ。


おかげで時々、身内みたいに接してしまう時があってーーー。


「できの悪い妹と混同してすまなかった。あいつよりも芹那の方が相当成績優秀だってこと忘れてたよ……」


学年一番だと親が言ってたっけ。

国立大も余裕で合格しそうだ…って話してたよな。


「でも、油断すんなよ。バイトしたから大学落ちましたなんて笑えねーから!」


「うん……大丈夫。返って勉強に集中できるから。…それより、さっきの菅野さんのことだけど……」


「あいつ⁉︎ ……ああ、今のか…。ちょっと…いろいろあってさ……」



頭に蘇る菅野の泣き顔。



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