あるワケないじゃん、そんな恋。
さっきから洋ちゃん、ずっと元気ない。

ぼんやりしながら絶対に他のこと考えてる。


ーー察しはついてる。

多分、菅野さんのことだ。


(…あの人、洋ちゃんとはお友達って言ってたけど…さっきの二人の雰囲気からしてどうしてもそんなふうに思えない。どっちかっていうとやっぱりカップルみたいだし、付き合うのやめるとか言ってたけど、菅野さんの顔泣きそうだったし……逃げてった後の洋ちゃんの顔も何だか切なそうで…こないだのイブの夜みたいだった………)




クリスマスイブの夜、私は自分の部屋の窓辺で洋ちゃんが帰ってくるのをずっと待ってた。


…以前は洋ちゃん、イブに自宅へ帰ってくることなんて無かったけど、この最近は彼女いる気配もなくて、ひょっとしたら今年がチャンスかなぁ…と思ってた。


だけど、なかなか帰ってこなくてやっぱり彼女いたんだと諦めかけた時ーーー



トボトボ…と歩く姿が見えてきて、嬉しくなって声かけようとして窓ガラスを開けたら……。




……手にはロングブーツが片方だけ握られてて……。

その力の抜けた背中は丸くて、心なしか元気もなさそうで……。


イブデートに失敗しました…的な雰囲気が立ち込めてて、…結局、声もかけれなかった。



そしたら翌日、図書館へ行こうと出た庭先で聞こえてきたの。
洋ちゃんの声がーーー。


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